そう、それが言いたかった

2010年にpixivではじめての処女作、『who are the hero』を投稿する。who are the heroを完結後は小説家になろうに移動。現在、思春期の少年、少女がゾンビたちが蹂躙する日本で戦う『エデンプロジェクト』と、はてなブログでネット小説書籍化本の批評ブログ、『そう、それがいいたかった』を更新中。

『年下寮母に甘えていいですよ?』について

さて、今回紹介する作品はこちら、『年下寮母に甘えていいですよ?』です。

年下寮母に甘えていいですよ? (ガガガ文庫)

あらすじ
これからは私があなたのおかーさんです♪

「私は寮生みんなの母親です。だから、優斗さんも気兼ねなく『おかーさん』と呼んでくださいね♪」

不思議な学生寮に住むことになった天涯孤独の高校生・四ノ宮優斗は、中学生にしか見えない寮母の九段下あるてにそう告げられる。しかし、現代社会を生きる男子高校生が、年下の女の子に「はぁい、おかーさん! バブバブー! オギャオギャ!」なんて天地がひっくり返っても言えるわけがない。
それは、親戚中をたらい回しにされた過去から自立をモットーにして生きる優斗にとってはなおのことだ。だが、そんな彼の気持ちとは裏腹に、あるての甘やかし攻撃は留まるところを知らない。

「おかーさんが耳かきしてあげます!」
「おかーさんが添い寝してあげましょう♪」
「おかーさんの胸で甘えてくださいね?」

なんだこの安心感は……? これがおかーさんに甘えるということなのか……?
……いや! でも! 絶対に! 年下の女の子に甘えたりなんてしないんだからねっ!!!
第10回小学館ライトノベル大賞優秀賞『ふあゆ』の今慈ムジナがたどり着いた新境地! 甘やかしたがり年下寮母と自立したがり高校生が織りなす、新感覚バブコメここに爆誕!!

 セールで1巻が180円で売ってましたので、それをきっかけに買いました。

 面白いですよ、自分は自立した大人だから人には頼らないんだ、と強がる主人公の四宮優斗と、そんな彼の気持ちとは裏腹に、優斗を甘やかしたがるあると。彼と彼女の甘やかし甘やかされない攻防をトムとジェリー的なコメディとして読めます。
 また、自信を自立した大人だと考えるも、周囲からはアホだと認知されている彼の独特の一人称も読んでいて面白い。
 久々にこういう回りくどい大人ぶりたいけど、子供としての青さを感じる一人称を読みました。

 ただ、読んでみた感想としては、全体的に消化不良な気分ですね。

 序盤で、作品全体の関係性とキャラクター性の萌えを象徴するシーンを入れたうえで、主人公のキャラクター性、物語が動くきっかけとなる住んでいた場所がなくなる場面。そのうえであるてと出会い、学生寮に住むことになる。
 その後で、あるてのキャラクター性、学生寮の住人の登場。彼らとの交流により、学校生活が変化していって流れが前半なんですけどね。

 読んでて、主人公のキャラがちょっととっつきづらかった。

 俺は自立した大人だからって文が多くて辟易とする。自立した大人として周囲に見てもらいたいキャラ立てなのはわかるけど、いちいち口で言わせすぎな気がするんですよね。アパートをつぶされたときに誰にも相談せずに不動産屋をめぐったりとか、幼馴染の神林真菜とのやりとりとか、キャラクターのアクションだけでも読者は察せると思うんですよ。

 もちろんさ、この作品のテーマが自立するってどういうことなんだろう。誰かを頼るってどういうことかみたいなことだろうしさ。思春期の14歳が読むのを想定した作品だとしたらさ。僕が読むとキャラがわかりやすすぎると思っちゃうのでは、とも考えたんですけどね。

 でもですよ、もし、対象年齢がそのくらいだとしたら。

 なぜ、『年下寮母に甘えていいですよ』にしたのかって話になるんですよ。

 だってですよ、思春期の男の子がさ。お母さんのニュアンスを意識するようなタイトルのラノベをはたして買うんでしょうか?
 『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』とか、中学生や高校生が買うか? アレを平気で買って本棚に並べられるのってさ。ホントにオタクのさ。わりと20~35くらいの大人がむしろ買ってる気がするんですよ。

 そもそもさ、年下の女の子にオギャリたいのってさ。青臭い悩みを抱えている学生じゃなくてさ。朝から深夜まで働いているいい歳こいた大人なんだよ。そんな俺らがさ。なんで、今になってオギャリたいのかといやさ。俺らが若いころにやってたドラマやテレビを思い出していただけたらわかりますよ。

 俺たちが中学生、高校生の頃と言えばですよ。2006年くらいにいじめ問題ってのが深刻化してさ。朝日新聞には「いじめられている君へ」なんてコーナーがあったんですよ。2005年に『女王の教室』ってドラマがあってさ。今、学校は地獄だってのを強調したドラマだったんですよ。それと同時期に『ドラゴン桜』ってのがあってさ。なにかといやさ、東大を目指して勉強する話なんだよ。

 この二つが同時期に放送してるってことがどういうことかといやさ。一方はこの世界は地獄だよって言いながらさ。そこで生き抜くためには勉強して1番を取らなければいけないんだよの二つのメッセージがさ。世間にメッチャあったんだよ。

 あの二つのドラマだけでなく、いろんな番組や大人がさ。最近の高須委員長みたいなことを当時の俺たちに言ってたわけよ。
 家に帰らずに夜中まで塾に行って、マクドが夕食みたいなヤツとかさ。お前なんかダメなんだって言われてヒネくれて周囲にあたる不良とか。自転車に両手縛ってマッドマックスみたいなことされるヤツとかいたわけじゃん。
 そんな苦労してる中でさ。蚊帳の外の奴らがとにかく勉強すればした奴だけが幸せになれるんだと言ってさ。

 実際、どうなったよ? 

 メチャクチャ勉強した奴も、そうでないヤツもブラック企業で安い賃金で働いてたりするんだぞ。
 いじめ自殺が多い中、生き残ったのにさ。社会でウツを患うヤツがいんだぞ。
 そりゃさ、ジャパリパークで癒されたくもなるじゃん。

全員がそうとは言わないけどさ、欠落した母性とか承認欲求を埋めたいっていう現在があると同時にさ。それを年上に求められるほど、誰かを信頼できないという過去があってさ。

だから暴力性の排された年下に優しさを求めるって流れがあるんだよ。

つまりさ、みんな大変なんだよ。

そんな中でさ。アマゾンでバブみ求めた人がさ。少ない時間で読んだものにさ。タイトルどおりのものがなかったら怒るでしょ。

 例えば俺がラーメン屋に行ったとするよ。1時間ぐらいの行列のラーメン屋だよ。
 ラーメンが喰いたかったんだよ。まだかな~、どんなラーメン出るのかな~って思ってさ。
 ついに店の中に入ってさ。料理が出るわけじゃん。
 そしたらカレーが出てくるんだよ。
 あれ? カレー? もしかしてカレーラーメンかなって思ってさ。
 全部食べたよ。麺がなかったよ。米だけだったよ。  

店主さんに聞いたよ。すみません、ラーメンはありますか? ラーメンってのはね。コッテリしたスープに麺がはいったあなたのお店で出さなければいけないものなんですよ。

店主さんは自信満々で言ったよ。すみませんね、ラーメンは2回目からなんだ。まずはうちのカレーを食べてくれないとね。

じゃあ、カレー屋にすればいいじゃん!

そりゃカレーも美味いよ。野菜がちゃんとはいってるし。スパイスも効いてるよね。
でもさ、俺はラーメンを食べたくて店に入ったんだよ。胃がもたれても、身体に悪くてもいいからラーメンが食べたかったんだよ。

この人の前作の『ふあゆ』は読んだことないけどさ。たぶん、この人、編集部や一部の読書家には独特の世界観と文章の上手さで評価高いんでしょ。読めばわかるよ。

でもさ、それが売り上げに反映されないからさ。最近の読者に寄り添おうとしてさ。バブみを意識したタイトルにしたんでしょ。

手に取らせて、読ませてしまえば、この作家がどれだけ面白いかわかると思ったかもしんないけどさ。

年下寮母に甘えていいですよって書いてあったらさ。みんな年下の寮母に甘えたいんじゃなかろうか。ヤンデレが読みたいわけでも、思春期の少年の成長物語が読みたいわけではないんだよ。

とまあ、言ったわけだけどさ。ぶっちゃければ、ちゃんと本屋で立ち読みすれば一発でわかることだし。シリーズ化を意識した作品の場合、タイトルの要素だけを出したらネタ切れするのもわかります。

この作者さんの他の作品にも興味湧いたんで、今度、前作と2巻を読んで追って報告いたします。